平成3年度 研究報告 大分県工業試験場
5 プラズマ溶射技術(セラミックス皮膜)の研究
機械部 清 高 稔 勝
用いた。ブラストされた基材の表面粗さは、#20で80 〃m、#120で5J 川1の最大高さであった。
溶射は、最大出力40飾のプラズマ溶射装置を使用 した。各溶射材料についての溶射条件は、表2のと おりである。
1 はじめに
技術の進歩により、機械器具及び鋼構造物は、大
型化、高精度、耐久性等の仕様性能の向上が求めら
れている。それに伴ってこれら部品及び部材が使用
される環境も大変苛酷なものとなっている。これに
対処する技術として様々な表面改質法が用いられて いる。その中の一つに溶射技術がある。溶射は、電
気又は燃焼のエネルギーを用いて、溶融又は半溶融
した溶射材料を高速度で素材面に吹き付けて皮膜層
を形成する方法である。溶射材料の多さと膜厚の制
御が可能という特徴を有している。さらに適当な溶
射材料を単独又は複合して使用することによって、 耐摩耗性、耐食性、耐熱性等が得られ、基材に比べ
て大幅に、機能が向上することが可能となる。
溶射法の巾で容易に超高温が得られるプラズマ溶 射は、各種のセラミックコーティングを可能として
いる。普通プラズマ溶射によりセラミックス皮膜を
作る場合は、密着強さの向上及び基材とセラミック
スの熱膨張係数の緩和等の冒自勺で金属が下地溶射さ
れているが、この下地溶射条件とセラミックス皮膜
の基本的な関係は、まだ明確にされていない。
そこで本研究は、代表的なセラミックスであるブ レアルミナとジルコニアについて下地溶射(主に卜 地溶射厚さ)が、セラミックス皮膜の熱衝撃性、肘 食性、組織等の基礎性質に及ぼす影響について検討
ナ? − ■ ■
表1溶射材料の化学成分及び粒径
表2 溶射条件
2 実験方法
溶射材料は、セラミックス材料としてグレイアル
ミナ(以後アルミナ)とジルコニア、下地溶射材料
にN
i Cr 合金、N
圭Al 複合体を用いた。溶射材料
の化学成分及び平均粒径を表i に示す。某材は
SS400で、形状はアルミナ溶射で50× 40× 3.2m
m
、ジ
ルコニア溶射で50×30× 3、2mmとした。前処理として ′ r 、骨相爪吏R霜ル廿 下地溶射と基材の表面粗さの関 レノ壬ビニ/「」レノ′ 】こ11し⊥1J 】し一(こhヽ 係を検討する為に、#20と酎20のアルミナグリッドを
溶射した試験片の一部は、真空熱処理炉で熱処理
を行い、溶射皮膜への影響を調べた。熱処理は、4 時間で950℃まで界温し、その温度で川寺間保持し炉 冷を行った。
溶射皮膜の厚さは、アルミナとジルコニアで0.3mm
を臼標とし、下地溶射U
)N
i m
Cr 合金、N
卜Al 複合
体は、その皮膜厚さの影響を調べるために、下地溶 射を行わない場合と下地厚さ0.05mm、0.15汀I m目標の
3とおりとした。下地溶射皮膜の厚さは、記号でNi
(二r 合金、N
i ¶ Å1複合体それぞれ厚さO
m
m
を0厚
さ0.05m
m
をI Cr 、I AL厚さ0.15m
m
を2Cr 、2ALとす
る。
熟衝撃試験は、J I SH
8666のセラミック溶射試験
方法に準じて、試験片を電気炉に挿入し、試験温度
に達した後、Ⅲ分間保持し取り出し、常温の水中で
急冷を行った。試験片に異状(目視での皮膜のき裂、
はく離、浮き上がりの有無の確認)が認められない 時は、この操作を最高10回まで繰り返した。試験温 度は、アルミナで800J C、ジルコニアで900〇Cとした。
耐食性試験は、J I SH
8661の亜鉛溶射製品試験方
法を参考にした。溶射試験片の皮膜以外の部分は、
塗装によりマスキングを行い、溶射試験片は2げCの 5%食塩水に試験片の長て方向に半分浸セキした。
そして一定時間経過毎に皮膜のフクレ、錆、ハガレ
等且)状況を観察した。さらに14(川寺間経過した試験片 について、溶液中に溶出した鉄濃度を原子吸光分析 装置にて測定した。
図3及び4は、ジルコニア皮膜についてNi 肘Cr 合金及びNi −Al 複合体の厚さの影響を示したもの である。Ni −Cr 合金下地溶射では、基材表面の輯さ に関係なく熱処理することによって耐熱衝撃性は、
良くなっている。一方非熱処理の試料は、F地溶射
の厚さに応じて耐熱衝撃性が幾分向上している。ま た、図上では示していないが、非熱処理試料もNi Cr 合金皮膜厚さをさらに増すことによって熱処理
された試料と同程度の耐熱衝撃性が得られた。
N
i Al 複合体が下地溶射された場合は、N
トCr
合金と同様に熱処理の効果が認められる。又非熱処
理の#2臣アルミナグリッドでブラストされた試料で
は、N
i Cr 合金に比較して耐熱衝撃性が一段と向
上しているのが認められる。
3 実験結果及び考察 3.1 熱衝撃性試験
図1及び凶2は、アルミナ皮膜に於いて、N
i Cr
合金とN
i −Al 複合体各々の下地皮膜厚さが耐熱衝
撃性に与える影響について示したものである。 Ni −Cr 合金の下地溶射、非熱処理の場合、#20の アルミナグリッドを用いた基材の表面粗さが大きい 試料が耐熱衝撃性は良くなっている。しかし、基材 の表面粗さが小さい#120アルミナグリッドを使用し た試料でも下地溶射を行うことによって耐熱衝撃性 は向上している。ルー方熱処理を行うと基材の表面粗 さが大きい方で耐熱衝撃性が落ちているのが認めら
れ、熱処理による効果は認められない。
Ni ノ\1複合体をhF地溶射とした場合、#20アルミ
ナグリッドでブラストされた基材の内熱処理された
ものは、N
i 仙Al 複合体皮膜厚さに応じて耐熱衝撃
性が増している。一方#120アルミナグリッドでブラ
ストされた基材では、熱処理された試料について下
地溶射皮膜厚さに応じた耐熱衝撃性の変化は顕著宥 認められない。
肝 46
1Cr
ポンドコートの厚さ
図1アルミナ皮膜のボンドコ榊卜厚さと耐熱衝撃
性の関係(下地溶射N
i 州Cr 合金)
1AL
ボンドコートの厚さ
平成3年度 研究報告 大分県工業試験場
ハリ
ハ‖リ
︵ご蒜荒警
P
∵聖迷監羽沢應
0
︵直︶姦[且掛湛感
1AL 2AL
ポンドコ椚卜の厚さ
1Cr
ポンドコートの厚さ 図3 ジルコニア皮膜のボンドコ開卜厚さと耐熱衝
撃性の関係(下地溶射Ni −Cr 合金)
図6 アルミナ皮膜のボンドコ上丹厚さと錆発生開 始時間の関係(下地溶射Ni ・W【Ai 複合体)
図7及び8は、アルミナ皮膜に於ける試験開始か ら140時間経過後の浸セキ液中の鉄濃度を示したも のである。
︵回︶慮回教趣意
n
U
︵
2
d
d
︶嘲警官笠品忘
1ÅL
ポンドコートの厚さ 国4 ジルコニア皮膜のポンドコート厚さと耐熱衝
撃性の関係(下地溶射Ni −Al 複合体)
3.2 耐食性試験
図5及び6は、目視観察でアルミナ皮膜に於いて 錆発生開始までの時間を示したものである。
1Cr
ボンドコー トの厚さ 回7 アルミナ皮膜のポンドコート厚さと鉄遷出塁
の関係(下地溶射Ni −一Cr 合金)
0
5
︵㍍︶誕盟
G
ト崩悪監朝鮮鑑
﹁
r
J
︵
2
n
d
︶湖東︹
b
古事華魂
1Cr
ボンドコ山トロ)厚さ
1Å富ノ
ポンドコートの厚さ 団8 アルミナ皮膜のポンドコート厚さと扶溶出墨
の関係(■F地溶射Ni Ai 複合体) 団5 アルミナ皮膜のボンドニコーl 卜厚さと錆発生開
Ni ¶ Cr 合金下地溶射では、熱処理により浸セキ 液中への鉄の溶出量は増しているが、その溶出量は Ni 〝〉−Cr 合金度按摩さに応じて減少している。また、 巨言祝観察による錆発生までの開始時間は、鉄溶出量 と反対にN圭C王ふ合金皮膜厚さの薄い方で長くなっ
ている。
N圭A呈複合体下地溶射では、Ni んCr 合金と同様 に熱処理により耐食性が落ちている。しかし非熟処 要撃の皮膜では、1描寺間を経過しても鍔の発生は認め
られなかった。
挺盲9及び10は、ジルコニア皮膜に於ける鉄濃度を 示したものである。冒硯顧察では、すべての試料で 24時間以内に皮膜表面への錆の発生が認められた。 これは、ジルコニア皮膜における基材からの鉄塔出 量がアルミナ皮膜に比較して格段高いことから推察 される。
アルミナ 熱処理無し
腑
︵∈蓋︶畔褒︹三幸聾魂
アルミナ 熱処頚有り
i Cr
ポンドコートプ〕厚さ 玩撃 ジメ♭ヨニア皮膜のポンドヨ皿卜厚姦藍鋲溶出
義邦関係(下地溶射昂巨Cr 合金)
ジルコニア 熱処理無し
壱蒙霊豊警主意養蚕
1AL
ポノ ーごコートソ)厚さ
−− 、、− − 、
量の関係(下地溶射N卜A呈複合体)
48
ジルコエア 熱処理有り
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4 まとめ
グレイアルミナ及びジルコニア皮膜に及ぼす卜地 溶射の影響を調べるために基材の表面状態、下地溶
射材料の種類、熱処理の有無等の条件因子を用いて
熱衝撃試験、耐食性試験等の評価試験を行い次の結
果を得た。 熱衝撃試験
0アルミナ皮膜、Ni Cr 合金F地酒射では、#20ア
ルミナグリッドでブラストされた基材が、耐熱衝 撃性が良い 。又#120アルミナグリッドでブラスト
された基材も下地溶射によって耐熱衝撃性は増し たが、下地溶射厚さを約け.15mmにすると逆に落ち た。
〔)アルミナ、Ni Al 複合体下地溶射では、#20アル ミナグリッドでブラストされた基材に於いて熱処 揮と下地溶射皮膜厚さの効果が得られた。
0ジルコニア皮膜、Ni Cr 合金下地溶射では、熱処 理と下地皮膜厚さの効果が認められた。一方非熱 処理皮膜は、下地溶射皮膜を厚くして約0.2mm熱処
N
i dAl 複合体下地溶射がN
i −Cr 合金下地溶射
に比べて耐食性が良いのは、鉄に対してイオン化傾
向の大きいアルミニウムが優先的溶出している為と 思われる。
3.3 組織及び硬さ
写真1は、アルミナ及びジルコニア皮膜について
の皮膜断面の走査電r 顕微鏡写真である。各写真と
も上から基材、下地溶射皮膜、セラミック溶射皮膜
の組織となっている。非熱処理皮膜は、ブラストに
よって塑性変形された組織及び下地溶射と基材間の 気孔が認められる。一方熱処理によって基材は、結 晶粒界の大きな組織となっている。それは、下地溶 射に用いられたオーステナイト牛成元素であるニッ
ケルによって、熱処理行程で十分に結晶粒界が成長
したためと思われる。さらに下地溶射と基材問の気
孔がなくなり、一部反応層のようなものも観察され
る。
しかしセラミック皮膜と下地溶射問では、特別
な変化は観察されなかった。
理材と同等の耐熱衝撃性を示七 に於いてほ、、∧熟処一撃によ
Cジルコニア皮膜、Ni 、Al 複合体では、熱処理によ
る効果が大きかった。非熱処理皮膜では、表面粗
さの粗い#20アルミナグリッドでブラストされた
基材に於いて、下地皮膜厚さの効果が認められた。
耐食性試験
○ アノレミナ皮膜、Ni Cr 合金下地溶射では、熱処理
により耐食性は落ちた。下地溶射厚さの効果は、
非熱処理皮膜で幾分認められた。
(:〕アルミナ皮膜、Ni Al 複合体下地溶射では、熱処 理により耐食性は落ちた、しかし非熱処理皮膜で は140時間経過しても錆の発生が認められなかった(つ 〔:ジルコニア皮膜では、下地溶射、熟処理による影
響は認められず、すべての試料で訴が発生し′ ∼こ⊂)
って気孔数が増加しているのが認められる。この熱
処理によって増加した気孔が、金属〟セラミックス
問の熱膨張差による応力及びセラミックス皮膜内部 の応力の綬不【J に寄与して耐熱衝撃性を増したと考え
られる。しかし、今回の組織観察では、各評価試験
との因果関係を根本的に導き出せなかった。溶射装
、
セラミックス材料、下地溶射材料、熱処理の有
無が複祥に関係していたためと思われる。
表3は、皮膜断由の基材、F地溶射皮膜、セラミ
ックス皮膜の硬さの平均を示している。セラミック
ス皮膜ではN
i Al 複合体の方がN
i −Ci 一合金下地
溶射した特に比較して鞭さが、上がっている。また、 熱処理により卜地溶射の硬さが幾分低下している。
衰3 溶射皮膜断面の硬さ
おわりに、この実験に使用したプラズマ溶射装置、寅空熱処理炉、走査電子顕微鏡は甘本臼転車振興会 の補助余を受けて設置したものである。
溶射皮膜
819 990ト 649朝7 742 232 669 三44 212 252∈223 無 222 175 j 212 担 有 無 有 無 音声 有
アルミナ馴莫j
;;㌃三三丁妄盲1
参考文献
1溶射ハンドブック:=本溶射協会編,新技術開 発センター
2 溶射枝柿丁,VOL.9NO.1へノNO.3:慶事配u坂
ん 49 Ni Cr 合 金